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治療

肉芽腫性口唇炎,Melkersson-Rosenthal症候群
Cheilitis granulomatosa,Melkersson-Rosenthal syndrome
宮垣 朝光
(聖マリアンナ医科大学准教授)

病態

 肉芽腫性口唇炎はその名の通り,口唇の慢性的な腫脹を生じ,組織学的に肉芽腫を呈する疾患である.また,口唇の腫脹以外に,皺襞舌,顔面神経麻痺が出現すると,Melkersson-Rosenthal症候群とよぶ.肉芽腫性口唇炎は,Melkersson-Rosenthal症候群の不完全型ないし初期型とする考え方が主流である.20~40歳代に多く,高齢者では比較的少ない.

【病因・発症機序】病因は明らかではないが,食物や食品添加物,金属に対するアレルギー反応や齲歯などの慢性感染症が原因になると考えられている.また,遺伝的要因の関与も想定されている.


診断

【鑑別診断で想起すべき疾患】血管性浮腫,サルコイドーシスなどが鑑別になる.

【臨床症状からの診断】上下口唇のどちらか一方,時に両方に急速に浮腫を生じ,数日から数時間で消失することを繰り返す.不規則な再燃・消褪を繰り返し,徐々に慢性的な腫脹に移行し,最終的には硬さを伴う持続的な腫脹となる(図17-3).口腔内,頰部の腫脹を伴うこともある.Melkersson-Rosenthal症候群では,舌の腫大とそれに伴う皺襞の著明化も出現し,片側性の顔面神経麻痺も呈する.顔面神経麻痺も,口唇の腫脹と同様に,軽快・再燃を繰り返し,徐々に症状が固定してくる.ただし,3主徴が揃わない症例も多く,初期は口唇の腫脹のみで,長期的なフォローアップを経て,皺襞舌,顔面神経麻痺が出現する症例も珍しくない.臨床症状のみでの診断は難しく,組織学的検査が望ましい.

【病理組織学的検査】初期には,真皮の浮腫と血管周囲性のリンパ球,組織球の浸潤を認めるのみだが,症状が固定したあとは,巨細胞を混じた非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を呈する.

【全身精査】口唇の腫脹のみの症例では,臨床症状,病理組織学的所見を加味しても,サルコイドーシス,Crohn病と鑑別できない.そのため,胸部X線検査,

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