病態
薬剤に期待される効果以外の作用が皮膚に生じて,発疹として出現した状態である.アレルギー性と非アレルギー性の薬疹があり,前者のうち遅発型アレルギーによるものが狭義のいわゆる“薬疹”に相当する.
アレルギー性とは免疫学的機序によって生じる病態であり,主にT細胞がT細胞受容体(TCR:T cell receptor)を介して,薬剤抗原を認識することにより生じる.そのほか,薬剤存在下で抗体が病的活性を発揮することで生じる薬剤アレルギーも存在する.
【病因・発症機序】①アレルギー性の薬疹:TCRを介する機序の場合,HLAと薬剤抗原の複合体を認識する形式となる.疫学的調査から漢民族においては,カルバマゼピンによるStevens-Johnson症候群(SJS:Stevens-Johnson syndrome)/中毒性表皮壊死症(TEN:toxic epidermal necrolysis)の発症とHLA-B*1502,アロプリノールによるSJS/TENの発症とHLA-B*5801との強い相関が知られているほか,他国においてもアロプリノールとHLA-B*5801,ジアフェニルスルホンとHLA-B*1301との相関など,いくつかの薬剤とHLAとの関連性が証明されている.薬疹を起こす機序のうちわかりやすい例として,AIDS治療薬であるアバカビルとHLA-B*5701との関連が知られている.HLAの構造には抗原ペプチドがはまり込む溝が存在し,HLAの多様性によって,はまり込むペプチドの種類が個人ごとに異なる.HLA-B*5701の溝の一部には,アバカビルがはまり込むのにちょうどよいサイズのポケットが存在している.そこにアバカビルが結合するために,ペプチドを受け入れる溝の構造が変化し,その結果,はまり込めるペプチドの種類が変化する.そのため,自己抗原にもかかわらず新しいペプチドの抗原提示が生体
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