診療支援
治療

電撃傷
Electrical injuries
臼田 俊和
(前・名古屋大学臨床教授)

病態

 電気による生体の組織損傷(電撃傷)は,生体内を電流が流れてジュール熱によって生じる組織損傷〔真性電撃傷(true electrical injury)〕と,電気火花(スパーク)やアーク放電による電気火傷に大別されるが,両者の病態,臨床経過は大きく異なっている.特殊な電撃傷として雷による雷撃傷がある.

 true electrical injuryは,生体内を通電する際のジュール熱によって,神経,筋肉,血管などの深部組織が損傷,破壊されることによって生じるきわめて重度の熱傷である(図19-9a,b).電気火傷はスパークによって生じる火傷で,主に体表面の熱傷であり,衣服が燃えて受傷(flame burn)することもある(図19-9c)

【特に注意すべき臨床症状】受傷時に心停止,心室細動を生じて死に至る場合もあり,直流よりも交流のほうが一般的に危険性は高い.受傷に伴う転倒や高所からの落下による二次的損傷を伴うこともある.受傷初期では,脱水ショック,無尿,ミオグロビン尿による腎障害に注意を要する.


診断

 電撃傷の重症度は,受傷面積ではなく受傷体積によって決まるので,深部組織の損傷を血液検査所見,尿検査所見を総合して適正に評価することが重要である.外見よりも深部損傷が激しいことも多い.感電時の副損傷(落下による骨折など)や合併症にも注意する.

【必要な検査とその所見】バイタルサインのチェックと血液検査(末梢血一般,生化学),尿検査,心電図は必須で,受傷状況や臨床症状に応じて,X線検査・CT検査・MRI検査も必要になる.検査所見では血液濃縮の有無,CK値などの筋原性酵素値の推移,ミオグロビン尿(茶褐色~コーヒー様)に留意する.

【問診で聞くべきこと】受傷状況(受傷場所,時間,電圧,電流の種類,通電経路)の把握と,初療の方法,受傷後の尿量を確認する.電紋や電流斑の有無も視診により確認す

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