病態
機械的刺激を慢性的に反復して加えた皮膚に生じる色素沈着である.
【原因・発症機序】入浴時使用するナイロンタオル,ブラシ,たわし,ヘチマなどにより機械的刺激を慢性的に反復して加えた部位,特に骨が当たる皮膚(例えば鎖骨部,肩甲骨部,瘦せた人の肋骨部)に生じることが多い.使用したタオルを洗うとき,手桶内に浮かぶ独特のクリーミィな泡を見て得られる,“洗った”という満足感がその使用を助長する.
【臨床症状】一般に骨が当たる部位にくすんだ淡い褐色~黒褐色の色素斑としてみられ,典型的には,後頸部は水平に,背部では右肩から左腰部,左肩から右腰部などと,斜め十文字すなわち“襷(たすき)掛け”に,さらに腰部では水平に色素斑をみる.この色素斑は斑状(図20-11)図あるいはさざ波状で,前腕伸側にもみられることもある.毛孔は色素沈着を免れていることが多い.経過中に炎症症状を伴わない.病理組織学的には表皮基底層のメラニンの増加,真皮上層のメラニンの滴下とメラノファージの増加で,いわゆる組織学的色素失調がみられる.
診断
特有の好発部位に生じ,特有の臨床像で診断は可能である.
【鑑別診断で想起すべき疾患】黒皮症が挙げられる.この疾患では慢性刺激性皮膚炎が先行して生じるものが報告されている.それらには,洗顔剤による慢性刺激,線香の煙,ナフトールASによるネル寝間着などの色素性接触皮膚炎がある.
【合併症】斑状アミロイドーシスの合併のほか,色素斑中に多数の半米粒大の色素脱失斑をみた例,あるいは硬化性萎縮性苔癬を生じた例もある.
【問診で聞くべきこと】入浴時の習慣のほか,その人の思わぬ生活習慣が原因で生じることがある.例えば右肩にのみ幅4cmあまりの色素斑を生じた症例では,長年肩にショルダーバッグを担いで活動をしている探検家であった.
【臨床症状からの診断】①炎症を伴わない後天性の色素斑で,②色素沈着は毛孔を避けて
関連リンク
- 治療薬マニュアル2024/合剤 《シナール》
- 治療薬マニュアル2024/グルタチオン《タチオン》
- 治療薬マニュアル2024/トラネキサム酸《トランサミン トランサミン》
- 今日の皮膚疾患治療指針 第5版/一過性棘融解性皮膚症(Grover病)
- 今日の皮膚疾患治療指針 第5版/温熱性紅斑
- 今日の皮膚疾患治療指針 第5版/毛包虫性痤瘡
- 今日の治療指針2023年版/カプサイシンスプレー
- 今日の皮膚疾患治療指針 第5版/異汗症(異汗性湿疹),汗疱
- 急性中毒診療レジデントマニュアル 第2版/9 アガサ・クリスティ 『ディオメーデスの馬』
- 急性中毒診療レジデントマニュアル 第2版/10 アガサ・クリスティ 『邪悪の家』
- 今日の皮膚疾患治療指針 第5版/鶏眼,胼胝
- 今日の整形外科治療指針 第8版/鵝足炎
- 急性中毒診療レジデントマニュアル 第2版/25 アガサ・クリスティ 『そして誰もいなくなった』