診療支援
治療

太田母斑
Nevus of Ota
鑑 慎司
(関東中央病院部長)

病態

 太田母斑は生後1年以内に出現する青色や褐色の色素斑であり,額,目の周囲,頰,鼻が好発部位であり,顔面の片側に分布することが多い.1939年に太田正雄らが最初に報告した.

【頻度】日本人の1%弱にみられるものの,白人にはまれである.女性に多い.

【病因・発症機序】胎生期において神経管から皮膚へ遊走するメラノサイトの定着過程における異常と考えられている.GNAQ遺伝子変異が関与するという報告がある.

【臨床症状】真皮のメラノサイトやメラニンが存在する深さや量によって色調が変わる.深いと青くなり,浅いと褐色になる.眼球メラノーシスの場合は,強膜や虹彩にも色素沈着を伴う.なお,肩から肩甲骨のあたりに生じるものは伊藤母斑とよぶ.


診断

 皮疹の色調や形状より,視診で診断できる.皮膚生検をすることは少ない.

【鑑別診断で想起すべき疾患】①後天性両側性太田母斑様色素斑:思春期や成人になってから発症し,両頰に左右対称性に2~3mm程度の小さな褐色斑が播種状に多発,散在する.額や鼻では大きな褐色斑になることもある.遅発性両側性太田母斑様色素斑,後天性真皮メラノサイトーシス,対称性真皮メラノサイトーシス,Hori's nevusともよばれる.自然消褪することはないが,治療はQスイッチレーザーが有効である.肝斑との鑑別が必ずしも容易ではなく,肝斑と併存することもある.②色素血管母斑症:太田母斑のみならず毛細血管奇形も出現していたら,色素血管母斑症を想起すべきである.色素血管母斑症には全身症状がみられることがあり,Klippel-Trénaunay症候群,Sturge-Weber症候群,Parkes Weber症候群,緑内障や眼球メラノーシス,脳神経疾患などを併発する.色素血管母斑症患者では,GNA11やGNAQのモザイク変異が報告されている.

【問診で聞くべきこと】発症年齢を確認する.老人性色素斑よりは

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?