診療支援
治療

脂漏性角化症
Seborrheic keratosis
高井 利浩
(兵庫県立がんセンター部長)

病態

 毛包漏斗部の角化細胞由来と推測される,良性病変である.同義語として老人性疣贅,脂漏性疣贅などがある.著明なメラニン沈着を伴うものをmelanoacanthomaと称する場合もあるが,臨床実地上,区別する意義は乏しい.老人性色素斑(日光黒子とも称する)から移行する場合がある.換言すれば,日光黒子の一部は脂漏性角化症の早期病変である.

【臨床症状】中高年者の露光部,背部,胸腹部が好発部位であるが,掌蹠を除く全身に生じうる.きわめてありふれた,加齢性変化としての側面が強い病変である.扁平隆起~ドーム状隆起する境界明瞭,表面粗糙な結節で,常色,淡褐色,褐色,黒色などさまざまな色調を呈する(図22-1a).日光黒子は盛り上がりの乏しい淡褐色~褐色の色素斑である(図22-1c).炎症を伴う場合には周囲や下床に紅斑を示す.短期間に瘙痒を伴って多数の病変が生じる場合(Leser-Trélat sign),内臓悪性腫瘍のデルマドロームである可能性がある.


診断

 多くの例では肉眼所見とダーモスコピー所見によってなされる.

【鑑別診断で想起すべき疾患】色素性日光角化症,Bowen病,悪性黒色腫などとの鑑別が問題となる.

【臨床症状からの診断】代表的なダーモスコピー所見として,稗粒腫様囊腫(milia-like cyst),面皰様開大(comedo-like openings)がある(図22-1b).日光黒子では辺縁のmoth-eaten borderが特徴的である(図22-1d).しかし,悪性黒色腫においてもこれらと判断しうる所見が部分的にみられうることや,脂漏性角化症でもBowen病などの悪性腫瘍を合併あるいは併存させる例が報告されており,ダーモスコピー像は絶対的な判断基準ではないこと,1つの所見のみで決め打ちしないこと,細部にこだわりすぎず全体構築を重視すること,そして,一部でも脂漏性

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