病態
有棘細胞癌のほとんどは何らかの基盤となる状態,疾患(前癌病変)上に発症する.最も頻度が高いのは日光角化症であるが,そのほか,瘢痕や慢性炎症をきたす疾患が発生母地となることが多い.また,色素性乾皮症などの遺伝性皮膚疾患における発癌にも注意を要する.
瘢痕や難治性潰瘍から生じる悪性腫瘍は,1828年Nicolas Marjolinの報告を嚆矢としてMarjolin's ulcerとよばれ,古くより認識された概念である.多くは熱傷瘢痕が母地となり,熱傷受傷後,数十年を経て有棘細胞癌を生じる(図22-22)図.基底細胞癌,悪性黒色腫,肉腫などの発症もみられる.そのほか,慢性放射線皮膚炎,慢性膿皮症,下腿潰瘍,硬化性萎縮性苔癬,円板状エリテマトーデス,扁平苔癬,慢性骨髄炎,尋常性狼瘡,褥瘡,粉瘤などからの発癌も報告されている.
【頻度】①熱傷瘢痕ではMarjolin's ulcerを発症するのは