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治療

皮膚付属器癌
Cutaneous adnexal carcinoma
安齋 眞一
(ピーシーエルジャパン常勤医/日本医科大学非常勤講師)

 皮膚付属器癌は,汗腺,毛包および脂腺の構成成分への分化を示す悪性腫瘍である.その分類や病名に関しては,種々の記載があり,しばしば診断名を特定することが困難である.本項では,2018年WHOが提示した分類(表22-1)を用いることとする.

 厳密な病理組織学的所見によって診断された症例は,いずれの腫瘍もその頻度はかなりまれである.比較的頻度の高い汗孔癌や脂腺癌でも,有棘細胞癌(SCC)の1/20程度,基底細胞癌(BCC)の1/30程度,乳房外Paget病の1/3程度である.これ以外の腫瘍に至っては,さらにその頻度は低い.

 以下に,比較的頻度が高い,あるいは,臨床的に重要であると思われる腫瘍について,詳述する.


Ⅰ 汗器官癌─汗孔癌

 汗器官癌の確定診断には,涙腺,唾液腺,乳腺,消化管など内臓原発腺癌の皮膚転移を除外する必要がある.

病態

 表皮(あるいは毛包上皮)内あるいは真皮内のエクリン管あるいはアポクリン管への分化を呈する悪性腫瘍であり,孔新生物(poroid neoplasms)の悪性腫瘍型である.良性の孔新生物内に発生することが多いが,必ずしも良性成分が確認できるとは限らない.

【臨床症状】高齢者の下肢に好発するが,全身のいかなる部位にも発生する.外向性の結節のこともあるが,皮内あるいは皮下の硬結を呈することもある.


診断

 病理組織学的に,核異型性のある基底細胞様の孔細胞と有棘細胞様の小皮縁細胞で構成され,小皮縁細胞の集簇部位に管腔形成を伴う腫瘍であることを確認することにより診断は確定する.しばしば,良性の孔細胞新生物(汗孔腫など)と連続して病変が形成されることがある.


Ⅰ 汗器官癌─微小囊胞性付属器癌

病態

 エクリン腺あるいはアポクリン腺の導管に分化する腫瘍細胞で構成され,局所浸潤性はあるが,転移することの少ない悪性腫瘍である.汗管腫癌は,高分化で扁平上皮成分のほとんどない微小囊

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