診療支援
治療

悪性末梢神経鞘腫瘍
Malignant peripheral nerve sheath tumor:MPNST
田村 敦志
(伊勢崎市民病院医療副部長)

病態

 神経鞘を構成する細胞(Schwann細胞,神経周膜細胞,線維芽細胞など)に由来する,あるいはこれらの細胞への分化を示す悪性腫瘍である.末梢神経,既存の良性神経鞘腫瘍(多くは神経線維腫),あるいは神経線維腫症1型(NF1)患者に発生する場合が多い.これら以外に発生した場合には組織学的,免疫組織学的にSchwann細胞への分化を示すときに診断する.軟部肉腫全体の5~10%を占め,1/4~1/2はNF1患者に発生する.悪性度の高い肉腫で局所再発や遠隔転移をきたしやすく,予後不良である.


診断

【臨床症状】20~50歳に好発し,孤発例では性差はないが,NF1患者を多く含む報告では男性に多いとされる.増大傾向のある腫瘤を呈し,しばしば疼痛を伴う.既存の神経線維腫に突然の増大や疼痛の出現がみられた場合には本症を疑う.坐骨神経,腕神経叢,仙骨神経叢などの主要神経幹に生じやすいため,四肢近位部と躯幹が好発部位となる.主要神経に生じた場合,神経の肥厚として現れ,平均5cm以上の大型の腫瘤を形成し,放散痛,知覚異常,筋力低下などの感覚神経・運動神経障害をきたす.既存の神経線維腫に続発する場合にも深部の神経線維腫から生じる場合が多く,表在性の神経線維腫から発生することはまれである.NF1患者の叢状神経線維腫は発生母地として知られている.

【鑑別診断】皮膚科領域でみられる悪性末梢神経鞘腫瘍(MPNST)の多くはNF1患者から生じたものであり,NF1を背景とした例や主要な神経に発生した例では比較的容易に本症を疑うことができる.組織学的にはspindle cell melanomaやdesmoplastic melanomaとの鑑別が必要である.

【病理組織学的所見】紡錘形細胞が錯綜しながら増殖するが,しばしば細胞密度の高い領域と疎な領域とが織り交ぜたように存在する(marbled appearance

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