病態
皮膚創傷治癒過程における異常の結果,コラーゲンなど膠原線維の過剰産生により隆起性腫瘤となった皮膚病変である.肥厚性瘢痕はもともとの創部内に限局するが,ケロイドの場合は創部を越えて拡大する病変と定義されている(図24-11)図.病変により両者が合併,オーバーラップすることもありうる.
【病因・発症機序】外傷や外科的処置,毛包炎などによる炎症のほか,多くの外的刺激が誘因となる.ケロイドの発生には人種差があり,白色人種には少なく黒色人種に多い.また,妊娠や高血圧が悪化因子であることが指摘されている.
診断
【鑑別診断で想起すべき疾患】皮膚線維腫,隆起性皮膚線維肉腫などの隆起性病変.
【問診で聞くべきこと】ケロイド体質の有無.
【臨床症状からの診断】主に臨床所見と経過から診断,鑑別を行う.①肥厚性瘢痕の場合は比較的深い侵襲,潰瘍や手術痕などに続発し,半年~数年内に軽減することもある.活動期には赤みと隆起が目立つが,炎症が鎮静化するにつれて白く,平旦化して成熟瘢痕となる.②一方,ケロイドは毛包炎のほか微小な炎症・外傷やはっきりとした誘因がなくても生じる(図24-12)図.体質的素因があると考えられており,病変の隆起が自律的に進行する.好発部位は前胸部,肩(上腕外側)や恥骨部,耳介のほか上背部である.③ともに瘙痒を自覚することがあり,時に疼痛も伴う.
治療
治療は保存的治療と外科的治療に大別されるが,まず異物など創傷治癒の遅延につながる要因がないか確認,あれば取り除く.保存的治療としてステロイドの外用,テープ剤貼付や局所注射,圧迫療法,抗アレルギー薬の内服を考慮する.これらの保存的治療を組み合わせても効果がない場合や拘縮などにより機能的障害がある場合,外科的治療を考慮する.外科的切除と放射線治療の併用,レーザー治療などを組み合わせて加療を行う.
ステロイドは外用だけでなくドレッシング材を用い
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