診療支援
治療

指趾粘液囊腫
Digital mucous cyst
加藤 裕史
(名古屋市立大学准教授)

病態

【発症機序】指趾の関節包,腱鞘などの結合組織のヘルニア変化によって囊胞が出現する.爪母付近に出現した場合,爪甲の変形を伴うことも多い(図24-20)

【頻度】ガングリオンは20~40歳代の女性に好発するが,指趾粘液囊腫は50~70歳代のDIP関節に発症し,変形性関節症を合併することが多いとされている.


診断

【鑑別疾患】主な鑑別疾患としてGlomus腫瘍,爪下外骨腫,Bowen病などが挙げられる.

【画像検査】①超音波検査:皮膚直下にみられるタイプは超音波にて囊胞性病変として観察されるが,爪母付近にみられるタイプに関しては超音波での診断が困難なものもある.②MRI検査:MRIの性能にもよるが,ある程度以上の大きさのものは境界明瞭な囊胞性病変として観察できる.


治療

 画像検査にて診断が得られ,粘液の排出がみられない症例においては経過観察が望まれる.疼痛を伴うものや,診断が曖昧なものに関しては診断的治療を行うことがある.

a.囊腫切開

 ガングリオンと異なり,ゼリー状の内容物の量が少ないことが多く,針やメスで1~2mmほどの切開を加え,徒手的に圧迫を行うことで内容物を排出させることが多い.

b.液体窒素凝固

 囊腫部分に液体窒素をスプレーもしくは綿棒で圧抵する.表在性の病変と異なり,軟部組織に病変があることから,少なくとも痂皮形成がみられる程度の強度で行う必要がある.

c.外科的治療

 囊腫状に変形した周囲結合織を一塊として切除する.欠損が大きな場合は植皮や皮弁による再建を要する場合がある.変形性関節症を伴った症例では骨棘の切除や関節固定を要する場合もあり,整形外科専門医への相談が望ましい.

□患者説明のポイント 経過観察でも自然消褪する可能性があり,治療を行った場合の合併症,再発率なども事前に十分に説明することが重要である.

□生活指導のポイント 関節の反復運動を避け,不適切な自己処置(針で穴

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?