診療支援
治療

肥満細胞症,色素性蕁麻疹
Mastocytosis,Urticaria pigmentosa
神戸 直智
(京都大学准教授)

病態

 肥満細胞(mast cells)が局所で異常増殖した状態である.WHO分類(2016)では,皮膚(cutaneous)肥満細胞症(MC:mastocytosis),全身型(systemic)MC,限局性の肥満細胞腫瘍(localized mast cell tumor)に分類する.皮膚MCはさらに,maculopapular MC(いわゆる,色素性蕁麻疹),diffuse MC,限局性の肥満細胞腫(localized mastocytoma of skin)に分類される.肥満細胞の活性化に伴って生理活性物質が放出されることによって特徴的な臨床症状を呈するとともに,肥満細胞と増殖因子を共有するメラノサイトの局所での増殖をきたし,特徴的な褐色斑が皮膚にみられる.

【頻度】人口30万人に対して2人程度と推定され,その多くは小児例である.

【病因・発症機序】皮膚に増殖した肥満細胞を調べると,肥満細胞の分化と生存にかかわるstem cell factor(SCF)の受容体であるkit遺伝子に機能獲得型変異(Asp816Valなど)が高率に同定されるとされる.

【臨床症状】肥満細胞が増殖する部位に一致して,皮膚では褐色斑がみられる.全身型の場合には,肥満細胞が増殖した臓器ごとに固有の症状がみられる.特に全身型の33%に消化管への肥満細胞浸潤がみられ,消化性潰瘍や胃炎の原因となる.しかしながら,皮膚以外の臓器においても肥満細胞の増殖を認める全身型の頻度はきわめてまれである.

【特に注意すべき臨床症状】色素斑や結節部の機械的摩擦によって発赤・膨疹,時に水疱が確認されるのが特徴的であり,Darier徴候とよばれ,診断的価値が高い.


診断

 特徴的な皮膚所見から,本症を念頭においていれば,診断は容易である.病理組織において肥満細胞の増殖が確認されれば,確定診断となる.病理組織学的な肥満細胞の同定

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?