診療支援
治療

ヒト乳頭腫ウイルス感染症
Human papillomavirus infection
江川 形平
(京都大学講師)

病態

 ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)は皮膚や粘膜のケラチノサイトに感染し腫瘍を形成するウイルスである.HPVは現在200種類以上の異なる型が同定されており,原因となるHPV型と臨床病型とに一定の相関があることが知られる.一部のHPV型はBowen病や子宮頸癌など悪性腫瘍の発症に関与するため,感染防御の視点も重要である.2019年に作成された「疣贅診療ガイドライン」(日本皮膚科学会)も参照されたい.以下に代表的な病型を挙げる.

1.尋常性疣贅(図26-3)

 主として顔面や手足に生じる直径10mm以下の角化性丘疹である.皮膚科外来を訪れる疣贅患者の95%以上が本疾患であるとの統計がある.感染部位により形態が異なり,顔面や頸部では外方向性伸長が著明で,指状/糸状疣贅とよばれる.一方,手足の疣贅は扁平で,時に複数の疣贅がモザイク状に集合した結節を形成する.乳頭腫症が組織学的特徴の1つで,表皮直下まで毛細血管が伸長しており,これは肉眼でも赤色点として観察され,診断の一助となる.HPV2,27,57などが検出される.

2.ミルメシア

 主に小児の手足に生じ,初期には水疱状の外観を呈する.発赤や疼痛を伴うことがある.免疫原性が強く,自然治癒することも多い.HPV1が検出される.

3.扁平疣贅(図26-4)

 主に顔面や手背に生じる皮膚常色~淡褐色の扁平丘疹で,角化は強くない.Köbner現象をみることも多い.ダーモスコピーにて点状に拡張した毛細血管の観察が容易である.HPV3,10などが検出される.

4.色素性疣贅

 主に手足に生じる尋常性疣贅に似た丘疹で,淡黒色~黒色の色素沈着を伴う特徴を有する.HPV4,60,65が検出される.

5.尖圭コンジローマ(図26-5)

 粘膜部のHPV感染症である.角化を伴わず外方向性に伸長することから,鶏冠状,カリフラワー状と称される特徴的な外観を呈する.性感染症(

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