病態
麻疹ウイルスの初感染時に発症するウイルス性発疹症の1つである.一般的に「はしか」といわれる.空気感染により感染拡大するため,伝染力が強い(基本再生産数R0=12~18).
麻疹は,感染症法の5類感染症に指定されており,診断した医師は直ちに保健所を通して都道府県知事に届け出を提出する必要がある.
【病因・発症機序】①麻疹ウイルスは,パラミクソウイルス科モルビリウイルス属に分類されるマイナス鎖1本鎖RNAウイルスである.麻疹ウイルスは気道内のリンパ球,樹状細胞などに感染後,全身の免疫細胞,上皮細胞に感染し,麻疹ウイルスが気道内に放出され,新たに感染拡大をきたす.多くは顕性感染をきたすため,移行免疫が消失する生後6か月以降の小児に好発する.ワクチン未接種者などにみられる成人麻疹もある.麻疹に対する不十分な免疫の状態で麻疹ウイルスに感染して発症する修飾麻疹もしばしば問題となる.②潜伏期間10~14日ののち,38~39℃の発熱,結膜充血・眼脂,感冒様症状が2~4日間持続し,いったん解熱する(カタル期).カタル期後期から解熱する頃,頰粘膜に特徴的な白色斑(Koplik斑)(図26-9)図が認められる.その後,再び39℃以上の発熱とともに皮疹が出現する(発疹期).皮疹は褐色浮腫性紅斑で,耳後部・頸部から始まり,顔面,胸部,躯幹,四肢へ融合しながら拡大する(図26-10)図.解熱後は全身状態が改善し,皮疹は色素沈着を残して治癒する(回復期).
診断
【臨床症状からの診断】二峰性の発熱,全身倦怠感,Koplik斑,融合傾向を伴う皮疹などから本疾患を疑う.麻疹ワクチンの接種歴,海外渡航歴の聴取も参考になる.
【合併症】中耳炎,肺炎,脳炎,クループ症候群,心筋炎や,罹患後6~8年を経て亜急性硬化性全脳炎(SSPE:subacute sclerosing panencephalitis)などを伴うこ