診療支援
治療

多発性汗腺膿瘍
Multiple sweat gland abscess
五十棲 健
(東京警察病院部長)

病態

 主として小児の汗疹に続発性に生ずる深在性のエクリン系汗器官感染症である.一方,アポクリン系汗器官では,腋窩鼠径部などに限局しており,化膿性汗腺炎(hidradenitis suppurativa)と称するが,こちらは主に成人に発症する慢性膿皮症の一型とされており,通常別疾患として扱う.

【頻度】本邦では,衛生環境が向上し,近年きわめてまれな疾患である.

【起因菌】通常,Staphylococcus aureusによる.MRSAによることもあるため,注意が必要である.

【臨床症状】同時期にまたは時期を変えて汗疹を伴う.主として乳幼児の頭部,顔面,項部,背部,臀部などに汗疹と合併して紅色結節または膿瘍が多発する.

【鑑別診断で想起すべき疾患】毛包炎,癤などとの鑑別を要することがある.


診断

 本症が汗疹に続発することから臨床的に診断される.


治療

 通常起因菌としてS. aureusが想定されるのでセフェム系抗菌薬を第1選択とする.

 若齢者に多い疾患であり,難治性でかつMRSAの関与が想定される場合は,ホスホマイシンカルシウム水和物(ホスミシン)を併用するなどの工夫が必要である.

 病原菌の培養から薬剤感受性が明らかな場合にはそれを参照する.ただし,幼小児の場合は,ミノサイクリン塩酸塩は禁忌ともいえないが,添付文書にある通り,歯や骨の形成に影響を与える可能性があるため,有用性がこうした危険性を上回ると想定される場合にのみ投与すべきであることに留意する.

Px処方例 1)を単独で用いる.MRSAの関与が想定される場合には,2)を単独,または1)と併用で用いる.

1)セフゾン細粒(小児用) 1日9~18mg/kg(成分量として)を3回に分服

2)ホスミシンドライシロップ 40~120mg/kg(成分量として)を3~4回に分服 力価

□患者説明のポイント‍ 局所の清潔(入浴,シャワー浴,石鹸を使用

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