診療支援
治療

鼠咬症
Rat-bite fever
清水 真
(国立病院機構名古屋医療センター医長)

病態

 鼠など齧歯類に咬まれることなどで感染し,皮疹・発熱・多発関節炎などをきたすまれな感染症である.主な起因菌はグラム陰性桿菌であるStreptobacillus moniliformisとらせん菌であるSpirillum minusであるが,その特徴と感染に伴う臨床所見が異なる.


診断

【鑑別診断で想起すべき疾患】風疹・麻疹などウイルス感染,つつが虫病,血管炎,薬疹.

【問診で聞くべきこと】鼠に咬まれるだけではなく,その排泄物や汚染された飲食物を介した経口感染により感染することがあるため,患者の居住環境(トイレや水質環境,日常生活で鼠を目にすることがあるかなど)を確認する必要がある.

【臨床症状からの診断】Streptobacillus moniliformisによる場合:3~10日の潜伏期ののち,悪寒を伴う発熱,多発関節痛を呈する.頭痛,嘔気,咽頭痛,倦怠感などの症状を伴うこともある.発熱が出現した2~4日後,四肢に多彩な皮疹が出現し(紅色丘疹,斑状紅斑,点状出血,紫斑),手掌や足底には,有痛性膿疱を認める場合もある(図27-27)Spirillum minusによる場合:2週間程度の潜伏期ののち,回帰性発熱で発症し,比較的大型の丘疹,斑状疹が咬傷部位から全身に拡大する.リンパ節炎を併発することがあるが関節炎はまれである.

【必要な検査とその所見】①血液検査:好中球優位の白血球上昇,CRPの上昇など細菌感染のパターンを認める.②菌の同定Streptobacillus moniliformisの分離培養は,鼠咬部滲出液,血液などから可能であるが,Spirillum minusは人工培地では不可能である.近年はPCR法で咬傷部痂皮などから菌検出が可能であるが,専門施設に依頼する必要がある.③病理組織学的所見:紅斑部生検において,真皮血管周囲に好中球,リンパ球浸潤を認めるのみ

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