病態
土壌に棲息する好気性放線菌の一種であるNocardia属菌によって生じる皮膚感染症である.直接経皮的に感染する原発性皮膚ノカルジア症と,肺ノカルジア症などの内臓病変からの血行性散布により生じる続発性皮膚ノカルジア症がある.
【臨床症状・病型】紅斑,丘疹,結節,膿瘍などを形成し,顔面,四肢に好発する(図27-28)図.幅広い年齢層にみられるが,高齢者に多い傾向がある.皮膚病変は①菌腫型,②限局型,③リンパ管型に分類され,下記のような特徴を有する.
1.菌腫型
慢性に進行し,局所の硬結・腫脹,瘻孔形成,顆粒排出を3主徴とする.
2.限局型
亜急性に進行し,外傷部位にのみ皮膚症状が限局し,3主徴は伴わない.
3.リンパ管型
急性に発症し,所属リンパ節腫脹を伴い,原発巣よりリンパ行性に病変を形成する.
診断
【鑑別診断で想起すべき疾患】癤,膿瘍,蜂窩織炎などの膿皮症,放線菌症,スポロトリコーシスなどの深在性真菌症,皮膚結核,非結核性抗酸菌症などが挙げられるが,臨床型によって鑑別すべき疾患は異なってくる.
【問診で聞くべきこと】①既往歴・治療歴:既往歴のない健常者にもみられるが,悪性腫瘍,臓器移植後,HIV感染,ステロイドや免疫抑制薬投与中,糖尿病,慢性肺疾患,アルコール多飲などによる報告があり,免疫不全の確認を行う.β-ラクタム系の抗菌薬に抵抗性を示す経過も参考になりうる.②外傷歴:多くに植物の棘,転倒,交通事故などの先行する外傷がみられる.外傷から病変出現までの期間は数日から2年と幅があり,さかのぼって確認したほうがよい.
【診断・必要な検査】菌の分離・同定が確定診断方法となる.①塗抹検査:膿などのグラム染色を行うと,分岐したフィラメント状の陽性桿菌がみられる.本症が疑われたら,さらに抗酸菌染色を追加で行う.②培養検査:Nocardia属菌は通常の細菌に比べて発育が遅く,数日から長いと1~
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