診療支援
治療

マラセチア毛包炎
Malassezia folliculitis
石崎 純子
(東京女子医科大学附属足立医療センター准教授)

病態

 マラセチア毛包炎は,脂漏部位の常在真菌であるマラセチア菌が毛包内に胞子型で増殖して生じる毛包炎である.青壮年男性の体幹脂漏部位および上腕伸側に好発する.

【臨床症状】胸部,上背部,上腕伸側に生じる.皮疹は比較的均一な毛包性紅色丘疹ないし小膿疱で,時に痒みを伴う.面皰はみられない(図28-21)


診断

【鑑別診断で想起すべき疾患】尋常性痤瘡,毛囊炎,毛孔性苔癬などが鑑別に挙がる.マラセチア毛包炎では顔面には生じないこと,面皰を伴わないこと,皮疹の表面に光沢があることなどが鑑別点となる.

【診断に必要な検査所見】①直接鏡検所見:丘疹,膿疱の内容物を採取し,鏡検すると多数のマラセチア胞子を証明する.観察にはいくつかの注意点がある.パーカーインク(旧バージョンのブルーブラック,現バージョンのブラック)やクロラゾールブラックE,シカゴスカイブルーを添加したKOH液,あるいは酸性メチレンブルーでの染色が必要であること,顕微鏡のコンデンサーを上げ光量を最大にして観察することである.また,酸性メチレンブルーでは比較的短時間で観察できるが,それ以外では時間をおく必要がある(図28-22)②病理組織学的所見:毛包内にPAS染色またはGrocott染色陽性胞子が多数観察される.


治療

 抗真菌外用薬は軽症例に有効であるが保険適用はなく,「日本皮膚科学会皮膚真菌症診療ガイドライン2019」による推奨度はB,内服療法はイトラコナゾール(イトリゾール)に保険適用があり,推奨度はAとされる.

Px処方例 下記1),2)のいずれかを用いる.難治例には3)を併用する.

1)ニゾラールクリーム 1日1回 塗布

2)ケトコナゾールポンプスプレー 1日1回 塗布

3)イトリゾールカプセル(50mg) 1回2カプセル 食後 2週間

□生活指導のポイント‍ 蒸れの少ない綿などの肌着を着用し,多汗を避ける.発汗時の

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?