診療支援
治療

スポロトリコーシス
Sporotrichosis
畑 康樹
(神奈川はた皮膚科クリニック院長)

病態

 自然界の土壌や草木に腐生的に生息するSporothrix属の真菌が外傷などを介して真皮や皮下組織に侵入して発症する慢性肉芽腫性疾患である.かつては黒色真菌感染症とともに代表的な深在性真菌症であった.

【疫学】本邦での発症数は1980年代をピークに減少傾向であり,2010年以降の年間報告数は平均10例前後である.その理由として,都市化により土ないし草木と触れる機会が減少していることが挙げられる.関東近郊の農業地域,福岡県と佐賀県にまたがる筑後地域,長崎県島原地方に多くみられ,東北地方,北海道地方からの報告はきわめて少ない.年齢分布でかつては小児と高齢者の二峰性の分布をとっていたが,近年は小児の発症数は激減している.

【病原菌】原因菌はSporothrix(以下S). schenckiiとされていたが,2006年分子生物学的手法により,この菌は数種の菌からなる複合種であることが報告され,本邦分離株を検討したところ97%がS. globosaであったことが明らかにされた.近年はS. globosaの菌名で報告されることが増えている.

【臨床症状】病巣が原発巣に限局する固定型(限局型),リンパ行性に衛星病巣を形成する皮膚リンパ管型,免疫抑制患者に発症する播種型に分類され,前2者が大半を占める.成人では上肢,激減している小児では顔面の報告が多い.自覚症状を伴わない潰瘍やびらん,痂皮を伴った紅色結節などが多く,患者の多くは傷が治りにくいという主訴で受診する.


診断

 経過が比較的緩慢な皮疹で,診断を容易に確定し得ないような場合には,何よりもスポロトリコーシスではないかと疑うことが大切である.疑うことができれば,皮膚生検を行い,組織の真菌培養にてS.globosaを分離同定する.皮疹部の痂皮や滲出液からも菌が培養できる場合があり,小児の顔面例など容易に皮膚生検できない場合には試みるべき検査で

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