診療支援
治療

プロトテカ症
Protothecosis
野口 博光
(のぐち皮ふ科)

病態

‍ Prototheca属は樹液,河川,排水溝,魚の内臓など自然界に広く分布する藻類である.藻類は酸素発生型光合成を行う生物とされるが,Prototheca属は葉緑体が退化し,光が届かない環境中の栄養源を吸収して生きる従属栄養生物に進化した.有機物に富んだ水を好み,塩水でも生息できる.プロトテカ症の病型には皮膚型,肘の滑液包炎,全身型などがある.人畜共通感染症であり,ウシに乳房炎,イヌに出血性下痢などを生じる.

【頻度】世界で約200例,わが国で42例の報告があるまれな疾患である.Todd JRの160例の集計では皮膚型58%,肘の滑液包炎8%,全身型8%,創傷感染6%,指爪4%であった.

【病因・発症機序】ヒトのプロトテカ症の多くは,Prototheca wickerhamiiによる.2010年以降,本邦でP. cutisP. miyajiiP. zopfiiによる報告が各1例ある.Prototheca属は外傷などから経皮的に接種され感染する.健常者にも発症するが,免疫不全またはステロイド投与症例が増加し,新興感染症として注目される.基礎疾患は糖尿病が多い.

【臨床症状】顔や四肢,特に手背や前腕など露出部に好発する.疼痛のない局面や丘疹結節性の病変が拡大し湿疹様を呈し,虫喰い状の潰瘍を生じる(図28-33)


診断

 臨床症状からの診断は困難である.慢性炎症性病変で2週間の経験的治療に抵抗する場合,例えば湿疹としてステロイド外用薬に反応しないときに直接鏡検をする.検査所見は特異的である.パーカーインクKOH法で濃染する円形・桑実状の胞子囊を認める(図28-33).さらに病理組織標本のHE染色およびPAS染色で真皮内に微生物が観察される.シクロヘキシミド無添加のサブローデキストロース寒天培地で25℃で7日間培養すると白色酵母様集落が形成され,微生物はラクトフェノールコット

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