病態
細胞内寄生性の原虫であるToxoplasma gondiiによって引き起こされる.皮膚病変はまれだが,免疫不全がある場合や,妊婦,新生児で生じることがある.先天性に感染していた場合,壊死性,もしくは出血性の丘疹が生じる.
【頻度】国内からの報告では,妊婦の抗体保有率として2~10%程度と報告されている.
【感染経路】ネコの小腸内で有性生殖しており,オーシストとして糞便中に排泄される.それを他の哺乳類・鳥類が食べると急増虫体(タキゾイト)となり,筋肉や脳,眼などへ移行,緩増虫体(ブラディゾイト)となり,ブラディゾイトを含んだ組織cystを形成する.cystを含む筋肉(特に豚肉,羊肉,鹿肉だが,すべての温血動物でリスクがある)の十分な加熱なしでの摂食,もしくはネコの糞便で汚染された土壌との接触や生水の摂取などにより人間に感染するとされている.妊婦に感染した場合は,胎盤を経て胎児に垂直感染を起こす場合がある.また,臓器移植や輸血による感染も報告されている.
【症状】免疫機能が正常な場合,90%以上の症例では無症状である.症状が出る場合は急性感染として,発熱や倦怠感,筋肉痛,リンパ節腫脹などが生じる.ほとんどの患者は数か月で自然に回復する.慢性期の症状として,時に網脈絡膜炎を起こす.免疫不全がある場合は脳炎や肺炎,心膜炎,筋炎,肝炎などを起こす.胎児期に感染した場合,70~90%は無症状だが,網脈絡膜炎,難聴,小頭症,水頭症,脳内石灰化,精神神経運動障害,肝脾腫,血小板減少,肺炎,などが起こりうる.眼病変などは,当初不顕性感染でも,思春期頃まで遅発性の発症リスクがあるとされる.
【皮膚症状】①トキソプラズマ感染症において,皮膚症状が出現するのは10%未満であり,まれとされる.例えば,1994年のフランスからの報告ではHIV患者において脳以外のトキソプラズマ感染症に罹患した199名のう
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