診療支援
治療

多汗症
Hyperhidrosis
藤本 智子
(池袋西口ふくろう皮膚科クリニック院長)

病態

 気温や運動による体温の上昇や,緊張や集中での精神性負荷で発汗は誘発されるが,日常生活に支障をきたす程度と自覚すれば多汗症と診断される.続発性多汗症(薬剤性,神経疾患,内分泌疾患など)以外の大部分は,現在のところ原因が特定されておらず原発性多汗症と分類とされる.

【頻度】本邦で汗で日常生活に支障がある頻度は12%程度であり,手掌多汗症は5.25%,腋窩多汗症は5.8%程度とされている.

【病因・発症機序】コリン作動性副交感神経の終末からアセチルコリンが分泌され,エクリン汗腺の分泌部が収縮することで発汗が促されるが,血清学的,汗腺の形態学的な異常は明らかでない.原発性局所多汗症の場合,精神性発汗中枢として大脳前頭前皮質領域,自律神経系の何らかの機能的な異常の可能性が考えられている.


診断

 原発性多汗症は発汗する部位により,全身性多汗症と局所多汗症(頭部・顔面,腋窩,手掌,足底)に分類される.手掌,足底の発汗過多は比較的低年齢の未就学児,小学生あたりから認められる.腋窩は第2次性徴が始まるあたりの年齢から,さらに頭部・顔面は青年期から認められる.日常生活に支障をきたすようになることが受診動機であり,診断は比較的容易である.

【問診で聞くべきこと】以下の項目を聞く.①最初に症状が出るのは25歳以下,②左右対称性に発汗がみられる,③睡眠中は発汗が止まっている,④1週間に1回以上多汗のエピソードがある,⑤家族歴がみられる,⑥それらによって日常生活に支障をきたす.以上の6項目のうち2項目以上あてはまる場合を多汗症と診断する.典型的でない症状の場合には内分泌疾患や神経学的所見を確認する.

【必要な検査とその所見】多汗症に特異的な検査所見はないが,重症度は他覚的,自覚的な所見を総合して判断する.発汗量は問診,視診,触診で行う.発汗する場面や発汗量を具体的に(手掌:汗が水滴になる,垂れる程度など.

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