診療支援
治療

多毛症
Hypertrichosis,Hirsutism
下村 裕
(山口大学教授)

病態

 多毛症は,毛髪が正常よりも長く太くなる症状の総称であり,毛髪数が増加するという意味ではない.本症は先天性と後天性に大別され,それぞれに全身性と限局性の疾患が複数存在する.また,主に内分泌異常によって小児や女性において,髭,胸毛,背毛,下腹部などの男性毛が過剰に成長する男性型多毛症(hirsutism)と,男性毛以外の部位の軟毛も硬毛化する多毛症(hypertrichosis)に分類される.

【病型と原因】

1.後天性全身性多毛症

女性における後天性多毛症の代表的な基礎疾患として,多囊胞卵巣症候群(PCOS:polycystic ovary syndrome)が挙げられる.PCOSでは,卵巣の囊胞性変化と月経異常が認められ,卵巣内での男性ホルモン(アンドロゲン)の産生が過剰になるために多毛をきたす.下垂体性副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)産生腫瘍やアンドロゲン産生副腎皮質腫瘍によるCushing症候群,肺癌などの悪性腫瘍や薬剤の全身投与(蛋白同化ステロイド,副腎皮質ステロイド,合成プロゲステロン,シクロスポリン,ミノキシジルなど)によって,男女を問わず多毛症をきたしうる.

2.先天性全身性多毛症

 きわめてまれではあるが,主に染色体異常によって生下時から全身の毛髪の硬毛化を呈する全身性多毛症の患者が存在する(図31-13).本疾患の患者では,多毛に加えて歯肉肥厚,難聴や骨形成異常などを合併することがある.また,副腎皮質ステロイド合成酵素をコードする遺伝子の変異によっても先天性多毛症をきたす.

3.限局性多毛症

 副腎皮質ステロイドやミノキシジルの外用によって後天的に限局性多毛症を生じうることはよく知られている.先天性のものでは,立毛筋母斑や獣皮様母斑が代表的である.

【必要な検査】後天性全身性多毛症の多くが内分泌異常によって生じることから,ACTHやコルチゾールを含めた血液検査お

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