診療支援
治療

口角炎
Angular cheilitis
桒野 嘉弘
(帝京大学医学部附属溝口病院教授)

病態

 さまざまな原因により口角の皮膚と粘膜に炎症を起こした状態である.

 加齢や歯の喪失,義歯の不適合などが原因で口角部の皺が深くなり,唾液がたまったり,食物残渣が付着したりして,皮膚が常に浸軟してしまうと生じるほか,フロスが頻繁にあたることなどが刺激となっている場合もある.反対にドライマウスも原因となる.

 また,ビタミンB2,葉酸,鉄,蛋白などの欠乏によって生じ,口唇炎を伴うこともある.アトピー性皮膚炎やCrohn病に伴う場合もある.

【臨床症状】口角部に浮腫性の落屑性紅斑を生じる.亀裂が生じると開口時の疼痛を伴う.


診断

 臨床像より明らかであるが,口角カンジダ鑑別のため鏡検を行い真菌の有無を確認する.培養の場合,常在菌を検出しただけかもしれないことに注意する.細菌感染を疑えば培養検査に提出する.他の疾患がたまたま口角に生じる場合があり,臨床像や問診により鑑別する.例えば,ヘルペス感染症は通常1~2mm大の小水疱や円形のびらん,痂皮が集簇しており,確認できれば鑑別可能である.

 接触性皮膚炎の場合,慢性に経過すると苔癬化を伴い,歯磨き粉やリップクリームが原因の場合,口唇にも炎症を起こすことが多い.パッチテストを施行する.口唇が赤くつるつると光沢を帯びていた場合,栄養素の欠乏がないか検討する.


治療

‍ Candida属真菌や細菌の感染がある場合は,抗真菌薬や抗菌薬の外用や内服を行う.

 フロスによる刺激や舐める癖など,原因がある場合は避けてもらう.

 ドライマウスがある場合は原因を精査する.単純な脱水だけなら飲水励行で改善することもある.皺が深い場合はフィラーによる改善も報告されている.

 感染症が否定されれば,原因除去とともに下記外用を行うが再燃も多い.

Px処方例 下記を単独もしくは併用で使用する.

1)プロペト 1日数回 塗布

2)デキサメタゾン口腔用軟膏 1日2回 塗布

□患者説明のポイ

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