日常診療のなかで内分泌疾患を診断する契機として,皮膚病変は重要な手掛かりの1つとなる.本項では,糖尿病を除く代表的な内分泌疾患に伴う皮膚病変について述べる.
病態
種々のホルモンは表皮角化細胞の分化,色素細胞のメラニン産生,汗腺や脂腺細胞の機能,真皮線維芽細胞による膠原線維やグリコサミノグリカン(glycosaminoglycan:GAG)などの細胞外基質の産生,毛と爪甲の成長,脂肪細胞の増殖などに関与する.また,皮膚血管に作用し循環動態に影響を及ぼすため,分泌異常ではさまざまな皮膚性状の変化,皮膚病変を生じる.しかし,その詳細な作用機序は不明な点が多い.
甲状腺機能亢進症に伴う脛骨前粘液水腫は,甲状腺刺激ホルモン(thyroid stimulating hormone:TSH)受容体抗体が線維芽細胞を刺激してGAG産生を亢進させることが推測されている.
【臨床症状】内分泌異常により各疾患に特徴的な皮膚病変,皮膚性状の変化,色素異常,爪や毛髪の異常などが出現する(表33-4)図.
1.甲状腺機能亢進症
末梢血管の拡張,血流増加,発汗亢進により皮膚は温かく,湿潤する.顔面の潮紅,手掌紅斑をみることもある.
露光部に好発するびまん性色素沈着を生じる.また,両上下眼瞼に褐色の色素沈着(Jellinek徴候)を認めることがある.
Basedow病に伴う脛骨前粘液水腫(図33-7)図はヒアルロン酸の結節状沈着により生じる.下腿前面から足背の両側性,暗紅色~褐色,弾性硬の結節で,多毛を伴う.毛孔が開大してオレンジ皮(peau d'orange)様を呈する.
爪甲は軟らかく扁平になり,爪甲剝離症(Plummer's nail)を生じる.Basedow病では眼球突出,脛骨前粘液水腫とともに,まれに指節骨の骨膜肥厚を伴うばち状指(thyroid acropathy)を認める(図33-8,図33-
関連リンク
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