診療支援
治療

皮膚疾患と遺伝:総論
Genetic skin disorder
久保 亮治
(神戸大学教授)

 遺伝が関与する皮膚疾患には,①単一遺伝子の変異により発症する遺伝性疾患(表皮水疱症や魚鱗癬など)と,②複数の疾患感受性遺伝子が複合的に絡み合って発症する多因子遺伝病(アトピー性皮膚炎や乾癬など)がある.①はさらに,全身のすべての細胞が変異を有している全身性の疾患と,発生途中に新たに生じた体細胞変異により発症するモザイク疾患(先天性巨大色素性母斑や列序性表皮母斑など)に分けられる.本項では,主に①について解説するが,②も近年,genome-wide association study(GWAS)により疾患と関連するSNPや遺伝子座が特定されてきており,定期的に文献検索を行い,知識をアップデートしておく必要がある.


診断

 一般的に,遺伝性皮膚疾患の診断は,臨床所見,病理所見,遺伝形式,遺伝子検査などに基づいてなされる.各疾患の臨床所見,病理所見については,他項に詳細な記述があるため,本項では割愛し,ここでは遺伝形式と遺伝学的検査について解説する.

1.遺伝形式

 遺伝性疾患の遺伝形式には,常染色体優性遺伝,常染色体劣性遺伝,常染色体半優性遺伝,X連鎖性優性遺伝,X連鎖性劣性遺伝などがある.家族歴について詳細な問診を行い,家系図を作成し,遺伝形式を推定する.

2.遺伝学的検査

 遺伝学的検査は遺伝性疾患の確定診断にきわめて有用である.遺伝学的検査には,一部の例外を除き,患者末梢血中の白血球から抽出したゲノムDNAを用いる.遺伝情報は究極の個人情報であり,「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」(2017年2月28一部改正)に基づいた説明と同意の取得,データの取り扱いが必要である.同定した遺伝学的な変化が真に病原性のものであるかどうかを判定するために,可能であれば発端者(患者)だけではなく,両親からも採血して遺伝学的検査を行うことが望ましい.なお,表皮母斑などの体細胞変異により発症す

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