診療支援
患者説明

推薦の序
福井次矢

 本書は,診療行為「患者さんや家族に対する医療説明」がどの程度内科医師への仕事上の負荷になっているのかについて,一般社団法人内科系学会社会保険連合(内保連)が行った調査の結果を踏まえて編まれた“医療説明の便覧(マニュアル)”ともいえる書物である.

 本書の大部分を占める各論では,内科分野の主要な検査・治療81項目について,現場での説明時に用いることができるよう,統一されたフォーマット(病状,目的,検査や治療の方法,主な合併症・副作用,利益と不利益,代替法,費用)に則って,全体的に要点が簡潔に記述されている.多くの内科医にとって,自分自身が専門としている診療分野以外の検査や治療についての説明は,実際上,自分自身が病気になったときか家族が病気になったときにしか関わる機会がないことから,本書は医療の最前線で幅広く行われている検査・治療について,知識を最新化するうえでも有用である.いわんや,医師以外で患者さんに直接接する医療職,特に医師の説明に立ち会うことの多い看護師には,本書を座右に備え各論部分を参照されるよう強く勧めたい.

 総論では,主としてインフォームド・コンセントについて,その歴史や法律,医療経済,倫理学との関係が記述され,続いて,がんの診断・治療にかかるインフォームド・コンセントの考え方と具体的な手順が示されている.過去四半世紀の間にすべての医師に求められるようになった,現代医療を主導する基本理念である「根拠に基づいた医療」を実践するうえで,インフォームド・コンセントは,ほとんどの診療場面で不可欠な手順である.本書は,その意義と正しい手順を理解・確認できる優れた情報源となっている.

 以上から,本書が診療現場で有用な医療説明のマニュアルであることに疑いをはさむ余地はないが,並行して,医療説明がわが国の現今の保険制度の中では必ずしも正当に評価されてはおらず,早急に,保険収載され

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