診療支援
患者説明

推薦の序
山田雅子

 患者が納得して治療を選択するためには,医師による懇切丁寧な説明が不可欠です.保険医療機関及び保険医療養担当規則第十三条には,「保険医は,診療に当つては,懇切丁寧を旨とし,療養上必要な事項は理解し易いように指導しなければならない」と表現されています.この本の編者である蝶名林直彦先生は,医療行為に至る前の医師と患者の間で繰り広げられる対話の重要性にこだわり続けている内科系の医師です.患者が治療に対して納得した意思決定をするためには,医師による専門性の高い説明が必要で,その価値を人々に理解してほしいと考えておられるのだと思います.

 臨床現場では看護師などが「ICする」という動詞をよく使います.医師に「ICした?」と尋ねるときは,患者へ説明がなされて,サイン済みの同意書がある状態を期待しています.つまり,「ICする」のはこの場合医師となります.ですが,私はこの言葉の使い方は間違っていると思います.本書の総論でも解説されていますが,インフォームド・コンセントが意味するのは,治療を受ける患者自身が,自分の体調を理解し,その改善に向けた治療の選択肢を十分に理解している状態がインフォームドなのであり,その状態に対して行われようとしている治療を納得した状態がコンセントなのです.つまり,「ICする」の主語は患者です.

 この本は,内科系の医師が取り扱う治療や処置などのそれぞれについて,膨大な医学的エビデンスのなかから,患者にとってわかりやすい説明内容をコンパクトに例示しています.説明内容は,治療や処置の目的,効果,副作用,合併症,そしてその治療や処置を行わなかった場合にどうなるのか,ほかの治療の選択肢はあるかといったことに及びます.文体は「ですます調」で一貫しているので,冒頭に示した「懇切丁寧」らしさが醸し出され,読みやすいと感じられるかもしれません.

 ただ,ICの成立要素には,相手の同意能力

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?