1.許される人体実験の倫理規範―「ニュルンベルク綱領」と「ヘルシンキ宣言」
第二次世界大戦の終結の後,ドイツによって行われた戦争犯罪を裁く国際軍事裁判が開かれた.ニュルンベルク裁判(1945年11月~1946年10月)である.それに引き続いて,当時ニュルンベルクを占領統治していたアメリカ合衆国による「ニュルンベルク継続裁判」(~1949年4月)が行われた.その最初の裁判が,いわゆる「医者裁判」(1946年12月~1947年8月)とよばれるものである.そこではナチス・ドイツの虐殺や人体実験などに関与した者たちが裁かれた.この裁判では,第二次世界大戦中のユダヤ人に対する残虐な人体実験が,反倫理的,反社会的な犯罪として裁かれた.しかし,それは人体実験そのものを禁じたものではない.その判決文の中に「許可できる医学実験」と題する一節があり,これがニュルンベルク綱領(Nuremberg Code)(1