診療支援
患者説明

協働意思決定(shared decision making;SDM)の考え方
荻野美恵子
(国際医療福祉大学市川病院神経難病センター・センター長 国際医療福祉大学医学部医学教育統括センター・副センター長)

 医療において患者はさまざまな場面で選択を求められる.しかし,その選択の前提となる知識を十分に持ち合わせていることはまれであり,医療者と患者には大きな医学的知識の不均衡が存在する.患者や家族が後悔しない決断になるように医療者はどのように援助すべきかについて考えてみたい.

 意思決定において最も大切なことは「本人の意思」である.しかし,「本人の意思」がどこにあるのかを判断することは時に難しい.

 本項は主に成人を想定して記載しているが,一部は小児にも応用可能である.小児についてはアセント(大まかな賛意),ディセント(大まかな不同意)を含めさらに配慮しなければならない点がある.

1.患者の意思確認の難しさ

 高齢者や認知機能低下がある場合,介護の問題がある場合など,患者が「口に出したこと」が患者の意思とは限らないこともある.一方で,患者の意思があったとしても,周囲の状況により,希望する選択の成就が不可能な場合もある.そもそも患者および家族が理解できるように情報が伝わっていなかったり,さらには本人自身がどうしたいのかわかっていなかったりする場合も多い.

 このような状況のなかで意思決定支援をする者は,患者のおかれた心理・社会的状況を詳細に把握し,医療状況(医学的妥当性のみならず,医療を取り巻く環境も含む)を判断し,医療的および社会的には何が可能なのかを見極め,そのうえで患者の人生における価値観に沿った選択となるように援助しなければならない.

2.意思決定の原則

 何かを決めるときに最も大切にすべきことは「患者本人の意思」を患者自身が決めるということである.Beauchamp and Childressが唱えた倫理の4原則1),1)自律:respect for autonomy,2)無危害:nonmaleficence,3)仁恵:beneficence,4)正義:justiceにも自律尊重は重要

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