1.現在の病状・病態
以下のような病態があるときに,気管支鏡が考慮されます.
胸部X線検査や胸部CTで肺に異常な陰影があり,がんや感染症などが疑われます.最近続いている血痰の原因が画像では明らかでなく,その出血源を突き止める必要があります.痰の細胞診で悪性を疑う細胞(クラスⅢ以上)が複数回検出されました,その原因を精査する必要があります.
2.検査目的
まずは気管,気管支を観察して粘膜の異常がないか,気管,気管支が狭くなる病気がないか,痰や血痰がないかを観察します.
その後,標的となる病変から検体を採取し,細胞の種類や菌などを特定することで病気を診断することを目的とします.
気管支鏡検査は呼吸器疾患の診断のために最も重要な検査で,通常は安全に実施することができます.しかし,まれに大量の出血などの致命的な合併症が生じる可能性があります.また,検査を行っても診断が確定しないことがあります.
3.検査方法
誤嚥を防ぐため,食事を摂っていない状態で検査を行います(おおむね4時間程度の絶食が目安になります).準備段階として,あらかじめ局所麻酔薬で口腔内,その後喉頭(のど)や気管内にスプレー麻酔を行います.唾液や気管分泌物を抑えるお薬を使用する場合もあります.実際の検査自体は点滴による静脈麻酔を併用しながら行いますが,完全に眠るわけではなく意識は保たれます.仰臥位の状態で口から声帯を通って気管支鏡を入れるため,検査中は声が出せません.検査中に薬剤が眼に入らないように目隠しで眼を保護します.酸素モニターや心電図モニターを装着し,酸素状態が悪化する場合には酸素の吸入を行います.
検査台にあおむけで寝たあと,口もしくは鼻から気管支鏡を挿入します(図1図).口の場合にはマウスピースを装着し,検査内容に応じて気管内にチューブを挿入します.咳が出ないように麻酔薬を口腔内,気管支の中に撒布しながら観察し