診療支援
患者説明

食道がんの治療〔内視鏡,レーザー治療(PDT)を含む〕
矢野友規
(国立がん研究センター東病院消化管内視鏡科・科長)

1.現在の病状

 食道は,喉から胃をつなぎ食事が通る細長い消化管臓器です.食道は,部位によって頸部,胸部,腹部に分かれますが,そのほとんどは胸部で,胸部食道は気管,心臓,大動脈,肺などの重要な臓器に囲まれた体の中心部にあります(図1).食道がんの主な組織型は,「扁平上皮がん」と「腺がん」がありますが,日本人の食道がんは,約90%が扁平上皮がんと報告されています.食道扁平上皮がんが発生する主な原因は,飲酒,喫煙,熱いものを食べたり飲んだりする食習慣と報告されています1).食道がんは,初期には自覚症状がないことがほとんどですが,進行すると食事の際の違和感や食事の通過障害などの症状が出ます.初期の食道がんは,内視鏡検査や上部消化管造影などの検査で発見されることがほとんどです.

2.治療目的

 食道がんは,進行すると食事が食べられなくなるという症状以外にも,周りの臓器を侵し呼吸苦や痛みを伴うようになったり,食道から離れた臓器に転移をすることがありますので,適切な治療が必要です.

3.治療法の概略と効果

 食道がんに対する主な治療には,内視鏡治療,外科手術,放射線治療,薬物療法(抗がん剤)があります.がんの進行度(ステージ),患者さんの年齢や全身状態によって使い分けたり,いくつかの治療方法を組み合わせて治療を行います.それぞれの治療方法の基本的な適応は下記のとおりです.

1)内視鏡治療

 がんが食道粘膜にとどまっているステージ0期.

2)外科手術

 がんが粘膜下層にとどまっていて転移がないステージⅠ期から,がんがさらに深く浸潤していたりリンパ節に転移しているステージⅡまたはⅢ期の患者さんに対する標準的な治療です.がんを含めた食道と胃の一部,食道周囲のリンパ節を外科的に取り除きます.食道を取り除いたあとは,胃や腸を使って経路を再建して,食事が食べられるようにします.治療後の再発割合を下げたり,手術をや

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