診療支援
患者説明

早期胃癌に対する内視鏡的粘膜下層剝離術(初診時もしくは治療直前)
浦岡俊夫
(群馬大学大学院医学系研究科内科学講座消化器・肝臓内科学分野・教授)

1.現在の病状・病態

 胃内視鏡検査にて,早期胃癌が発見されました.胃癌は,胃の粘膜から発生します.早期胃癌は粘膜下層までにとどまるものをいいます.今回発見された胃癌の場所・大きさ・深さを図1を用いて示します.

2.内視鏡的切除の適応

1)適応の原則

 リンパ節転移の可能性がきわめて低く,腫瘍が一括切除できる大きさと部位にあること.

(1)絶対適応病変

・潰瘍を伴っていない分化型粘膜内癌(大きさは問わない)

・潰瘍を伴っている3cm以下の分化型粘膜内癌

(2)適応拡大病変

・潰瘍を伴っていない2cm以下の未分化型粘膜内癌

(3)相対適応病変

・(1),(2)以外の病変

 原則適応外ですが,年齢,併存症などの理由や推定されるリンパ節転移率などを考慮し,患者さんと相談したうえでの適応です1)

2)次のような場合は,内視鏡治療を原則行いません

・癌の明らかな粘膜下層への深い浸潤や転移がある場合

・コントロールできない出血傾向や心肺・肝腎障害などの重篤な合併症がある場合

・治療後の安静が守れない可能性がある場合

・患者さんや家族の承諾や協力が得られない場合

3.早期胃癌に対する各種治療法の長所・短所および手順

 各種治療法の長所・短所を表1図23)に示します.

1)内服薬の確認

・薬のアレルギーはありますか?

・抗血栓薬(パナルジン,ワーファリン,バイアスピリン,バファリン,プラビックス,プラザキサなど)は内服していますか?

 内服している場合には,術中・術後の出血や中止したときの血栓症のリスクなどを考慮し,一時的に中止する必要性があるのかを担当医と相談します

・静脈麻酔薬の併用禁忌薬(抗ウイルス薬の一部,低用量ピルなど)の内服はありますか?

4.胃病変に対するESDの偶発症およびその対策

1)穿孔

 治療の途中で胃に孔が開いてしまうことをいいます.頻度は数%以下で,多くは内視鏡でふさいで保存的に治療すること

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