1.現在の病状・病態
胃内視鏡検査にて,早期胃癌が発見されました.胃癌は,胃の粘膜から発生します.早期胃癌は粘膜下層までにとどまるものをいいます.今回発見された胃癌の場所・大きさ・深さを図1図を用いて示します.
2.内視鏡的切除の適応
1)適応の原則
リンパ節転移の可能性がきわめて低く,腫瘍が一括切除できる大きさと部位にあること.
(1)絶対適応病変
・潰瘍を伴っていない分化型粘膜内癌(大きさは問わない)
・潰瘍を伴っている3cm以下の分化型粘膜内癌
(2)適応拡大病変
・潰瘍を伴っていない2cm以下の未分化型粘膜内癌
(3)相対適応病変
・(1),(2)以外の病変
原則適応外ですが,年齢,併存症などの理由や推定されるリンパ節転移率などを考慮し,患者さんと相談したうえでの適応です1).
2)次のような場合は,内視鏡治療を原則行いません
・癌の明らかな粘膜下層への深い浸潤や転移がある場合
・コントロールできない出血傾向や心肺・肝腎障害などの重篤な合併症がある場合
・治療後の安静が守れない可能性がある場合
・患者さんや家族の承諾や協力が得られない場合
3.早期胃癌に対する各種治療法の長所・短所および手順
1)内服薬の確認
・薬のアレルギーはありますか?
・抗血栓薬(パナルジンⓇ,ワーファリンⓇ,バイアスピリンⓇ,バファリンⓇ,プラビックスⓇ,プラザキサⓇなど)は内服していますか?
内服している場合には,術中・術後の出血や中止したときの血栓症のリスクなどを考慮し,一時的に中止する必要性があるのかを担当医と相談します
・静脈麻酔薬の併用禁忌薬(抗ウイルス薬の一部,低用量ピルなど)の内服はありますか?
4.胃病変に対するESDの偶発症およびその対策
1)穿孔
治療の途中で胃に孔が開いてしまうことをいいます.頻度は数%以下で,多くは内視鏡でふさいで保存的に治療すること