1.現在の病状・病態

　人間の体は口から食物を食べて消化吸収を行うことにより，さまざまな栄養を摂取できるようにできています．なんらかの理由により口から栄養を摂取できなくなった方は（例えば嚥下機能に問題がある場合や，喉や食道が狭くなってしまい食物が通らない場合など），一時的なものであれば点滴や水分で補うことが可能ですが，長期間にわたる場合は栄養不十分になりだんだん体力が低下してしまいます．このような場合はなんらかの栄養治療が必要となりますが，胃や腸が正常に機能しているのであれば，消化管を使った経腸栄養を行ったほうがより生理的で自然に近い形での栄養補給が可能となります．鼻からチューブを挿入して経腸栄養を行うことも可能ですが，長期にわたる場合はチューブが苦痛になります．胃瘻を作ることにより，そのような苦痛なく経腸栄養を行うことが可能となります．

2.治療目的

　胃瘻造設とは，お腹の表面から胃へ通じる瘻孔という孔を開け，そこにカテーテルとよばれる管を留置する手技です（図1図）．このカテーテルを通して胃の中に直接栄養剤を注入することで，消化管から直接栄養を摂取できるようにすることが目的です．また時に減圧治療を目的として胃瘻造設を行うこともあります．胃の出口付近や小腸などに閉塞を生じると，食べ物や胃液が先に進まなくなり嘔吐を繰り返してしまいます．このような状況に対し，胃瘻を作って胃液を持続的に排出することにより症状を楽にすることができます．

3.治療法の概略

　胃瘻造設には内視鏡を用いた経皮内視鏡的胃瘻造設術（percutaneous endoscopic gastrostomy；PEG）と外科的胃瘻造設術がありますが，より簡便で低侵襲なPEGが一般的です．PEGは内視鏡室で行います．通常の胃カメラ検査と同様に，喉（経鼻内視鏡の場合は鼻腔）に麻酔薬を撒布した後，必要に応じて眠くなる薬（鎮静薬）や