診療支援
患者説明

糖尿病ケトアシドーシス
渥美義仁
(永寿総合病院糖尿病臨床研修センター・センター長)

1.現在の病状・病態

 受診前の多尿,脱水,口渇,多飲,体重減少という症状は,高血糖(250mg/dL超)が原因と考えられます.ちなみに,血糖の値というのは,食前100mg/dL未満で食後も130mg/dLを超えない狭い範囲に保たれています.高血糖となると余分な糖を尿糖として排出するので,血糖が高いほど排出する尿糖も多くなり多尿となります.多尿となると脱水となり,脱水となると口渇や多飲という症状をきたします.

 血糖を狭い範囲に保つしくみで最も大事なのは,血糖を体の細胞に取り込むインスリンという膵臓から出るホルモンです.インスリンの分泌が絶対的あるいは相対的に不足したり,インスリンが正常に作用しなくなったりすると,高血糖になるとともに,体内の脂肪を燃料とするようになり体重が減ります.脂肪を主な燃料とするようになると,脂肪の代謝産物であるケトン体が増えケトーシスという状態になります.ケトン体は酸性なので,ケトン体が異常に増えるとアシドーシス(酸性)となり,悪心,倦怠感や過呼吸を生じます.さらに進行すると低血圧,電解質異常や意識障害など生命にかかわるようになります.高血糖が著しくなる病態として,糖尿病ケトアシドーシス以外に,脱水が高度でもアシドーシスとならない高浸透圧高血糖症候群とよばれる病態もあります.両者の鑑別は必要ですが治療の基本は同じです.

 糖尿病ケトアシドーシスの原因は,インスリン注射の中断,糖尿病の治療中断や新たな発症,感染症,心血管疾患,高血糖をきたす薬物の使用,糖質を多く含むソフトドリンクの多量飲用などが主です.糖尿病治療薬の一系統であるSGLT2阻害薬という経口薬が,比較的低い血糖値でもケトアシドーシスをきたすことが最近注目されています.

2.治療目的

 治療の目的は,高い血糖を下げ,高度の脱水を改善し,ケトン体の産生を抑え,糖尿病ケトアシドーシスの状態を脱し,意識を

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?