診療支援
患者説明

妊娠糖尿病
税所芳史
(慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科・専任講師)

 当院では,産科と内科で作成した共通のパンフレット(図12)を用いて以下の説明を行っている.

1.現在の病状・病態

 今回,(   )さんは,外来で行った糖負荷検査にて,空腹時血糖(   )mg/dL,1時間値(   )mg/dL,2時間値(   )mg/dLでした.1つ以上の血糖値が基準を満たす場合,妊娠糖尿病と診断されます.妊娠糖尿病と診断されるのは,全妊婦の1割程度です.

 妊娠糖尿病とは,妊娠してから発症もしくは初めて発見された血糖値の異常です.妊娠中に血糖値が上昇して「糖尿病」に似た状態となります.妊娠中,血糖値が高いと何がいけないかというと,一番の問題はお腹の中の赤ちゃんが大きくなりやすいということです.その結果,分娩時に難産になったり帝王切開が必要となったりすることがあります.また,妊娠中お母さんの身体にも負担がかかり,血圧が上がったり,尿に蛋白が出る,以前は「妊娠中毒症」ともよばれていた「妊娠高血圧症候群」を起こしたりするリスクが高くなります.「糖尿病」とは異なり多くの場合,出産後には血糖値は正常化しますが,妊娠糖尿病と診断された女性は将来的に糖尿病を発症する頻度が高いとされています*1

2.治療目的

 治療の目的は,妊娠中血糖値を正常域に保つことで,妊娠中や出産時の合併症のリスクをできるだけ少なくし,安心・安全な出産を迎えることです.

 妊娠中,正常域とされる血糖値は,食事の前の血糖値が100mg/dL以下です.また食事をすると血糖値が上がりますが,食後2時間の血糖値が120mg/dLを超えないように血糖値をコントロールします(表2).

3.治療法の概略と効果

 血糖値をコントロールするために,まず食事療法が治療の基本になります.(   )さんの1日の食事摂取カロリーの目安は(   )カロリーとなりますが,妊婦さんは食後の血糖値が上がりやすく,また,空腹時間が長

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