診療支援
患者説明

甲状腺穿刺吸引細胞診
北川 亘
(伊藤病院外科・診療技術部・部長)

1.現状の病状・病態

 甲状腺のしこり(結節)の検査には超音波検査が有用です.超音波検査である程度良性のしこりか悪性のしこりかを推測することができますが,さらに穿刺吸引細胞診〔甲状腺穿刺吸引細胞診(fine needle aspiration cytology;FNAC)〕を行うことで,多くのしこりで良性か悪性かを鑑別することができます.

2.検査の目的

 診断を確定するためには手術でしこりを切除し,しこり全体を調べる必要(病理組織診断)があります.しかしすべてのしこりを手術するわけにはいきません.不要な手術を避けるために,まずはしこりから細胞を採取して良性と悪性のいずれの可能性が高いかを推測する必要があります.そのために行われる検査が細胞診検査です.穿刺して採取された細胞は,細胞診診断の専門医によって良性か悪性か判断されます.この細胞診結果と超音波検査でのしこりの形状や大きさなどから最終的な治療方針が決定されます.

3.検査法の概略と効果

 通常超音波ガイド下で穿刺中の針先を確認しながら,安全に配慮して行います.局所麻酔は通常使用しません.穿刺針がしこりに達したことを超音波画面で確認して,注射針で陰圧をかけ細胞を吸引し採取します.病状やしこりの数・形状によっては,数回穿刺することもあります.針を刺しているときは,声を出さないこと,飲み込まないこと,動かないように注意することが重要です.穿刺針を抜いた後は圧迫止血(約5~10分程度)します.針を刺している時間は5~10秒くらいです.穿刺部位が1か所であれば,全部の過程は5分ほどで終了します.

 抗凝固薬・抗血小板薬内服中や血液透析患者は,出血が止まりにくいので圧迫止血を通常より長くする必要があります.帰宅後はシャワー,入浴,飲酒を含めて普段どおりの生活で問題ありませんが,過度な運動は避けてください.

 甲状腺機能亢進症を伴うバセドウ(Ba

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