診療支援
患者説明

同種造血幹細胞移植
森 毅彦
(東京医科歯科大学血液内科・教授)

1.現在の病状・病態

 現在のあなたの病気は,治癒を目指すには同種造血幹細胞移植が必要な状態です.

2.治療目的

 白血病,骨髄異形成症候群,悪性リンパ腫などの血液腫瘍性疾患(血液がん),または再生不良性貧血などの非腫瘍性血液疾患の治癒を目指します.

3.治療法の概略と効果

 前処置(大量の抗がん剤投与,病状などにより全身放射線照射を組み合わせます)を行ったあとに,健康なドナーより提供される造血幹細胞をカテーテルから経静脈的に輸注(移植)します.前処置により一度,骨髄の中で白血球・赤血球・血小板という血液細胞がつくれなくなります.しかし,移植後2~4週するとドナーの血液細胞が増加してきます(「生着」とよびます).

 強力な前処置により白血病細胞などの血液がん細胞を根絶することが期待できます.生着後に起こるドナーの免疫細胞(白血球)によるあなたのがん細胞への攻撃も,前処置とともにその根絶に働きます.再生不良性貧血などの非腫瘍性疾患では数や機能に問題のある造血幹細胞や免疫細胞を,ドナーの正常な細胞と置換します.

 移植後は後述するさまざまな合併症の予防・管理が必要となり,特に免疫抑制薬により移植片対宿主病(graft versus host disease;GVHD)の予防と治療が重要です.

 生着して血液細胞数が安定し,全身状態が改善すれば外来治療に移行可能となりますが,さまざまな合併症の管理や体力低下により通常は移植から数か月間の入院が必要となります.退院後も,薬の内服や定期的な検査通院が必要になります.すべての投薬が不要になった後も健康管理のために,生涯,外来でのフォローを受けていただくことになります.

4.治療中・治療後に起こりえる主な合併症

1)前処置の実施期間

 吐き気・嘔吐,肝臓障害,腎臓障害,皮疹,心臓機能低下などが起こりえます.吐き気は制吐薬で対処をしますが,完全には抑えることがで

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?