診療支援
患者説明

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対する治療
磯部泰司
(福岡大学病院腫瘍・血液・感染症内科・准教授)

1.現在の病状・病態

1)悪性リンパ腫とは

 リンパ腫という病気は,白血球の一種であるリンパ球という血球(血液の細胞)の腫瘍で,良性・悪性という明瞭な区別はなく,すべて「悪性リンパ腫」とよばれています.もちろん進行が年単位とゆっくりで,診断後必ずしもすぐ治療介入が必要とならないインドレント・リンパ腫もありますが,月単位で病変が全身に広がるアグレッシブ・リンパ腫,週単位で進行する高度アグレッシブ・リンパ腫と臨床的には3群に大別され,後者2つは直ちに治療介入が必要となります.悪性リンパ腫は白血病や多発性骨髄腫と同様,「血液がん」の1つです.

 悪性リンパ腫には今や70種類以上の病型があり,病変部の組織検査(生検)で正確な「病型診断」が下されないと,治療選択を誤る危険性があります.また,病変部の広がりをPET–CT検査などで確認する「病期診断(ステージング)」も重要です.悪性リンパ腫の治療を行う前に,この「病型診断」と「病期診断」を正確に把握することが必須となります.

2)びまん性大細胞型B細胞リンパ腫とは

 リンパ球にはT細胞,NK細胞,B細胞という種類がありますが,「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B–cell lymphoma;DLBCL)」はB細胞ががん化したB細胞性リンパ腫の一種で,悪性リンパ腫全体のおよそ30%を占める最も頻度の高い病型です.リンパ節が腫れて発症するタイプ,それ以外の体のいろいろな場所にしこりを作って発症するタイプ,しこりははっきりしないけれども骨髄や血管内に病変があって,不明熱や貧血・全身倦怠感などの症状が主として出現するタイプなどがありますが,DLBCLは進行が比較的速く,アグレッシブ・リンパ腫の代表選手なのです.通常DLBCLは病気のもとが全身にばらまかれた状態で同時多発的に発症しますので,転移という概念に乏しい病気といえます.

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