診療支援
患者説明

小児造血器腫瘍に対する化学療法
富澤大輔
(国立成育医療研究センター小児がんセンター血液腫瘍科・診療部長)

 本項では,小児造血器腫瘍で最多の疾患である急性リンパ性白血病(acute lymphoblastic leukemia;ALL)を例として,記載します.また,小児特有の状況として,インフォームド・コンセントは通常患者本人ではなく,患者の親権者に対して行われます.しかし,子どもの年齢や発達に合わせて,わかりやすい言葉で,可能な限り病名の告知,病気や検査,治療内容の説明を行うことが求められます.小学生以上であれば,親権者とは別に,子ども本人から「インフォームド・アセント(法的規制を受けない子どもからの了承)」を得ることが望ましいです.

1.現在の病状・病態

 小児・思春期のALLは「小児がん」の一種です.がん細胞とは,正常な細胞に体の設計図である遺伝子の変異が積み重なることで,「正常な機能をもたない」,「過剰に増殖する」細胞に変化したものです.血液細胞ががん細胞になる病気が「白血病」です.ALLは,小児期・思春期のがんで最も多く,日本では1年間におよそ500人のお子さんが発症しています.なお,まれな例外を除いて,白血病の発症に関して遺伝や生活環境などの特定の原因による影響は少ない,と考えられています.

 血液の細胞は骨の中にある「骨髄」でつくられますが,白血病細胞も骨髄で増殖します.その結果,正常な血液の細胞(白血球・赤血球・血小板)が減ってしまいます.正常な白血球は免疫を担っているため,白血球が減少する結果,感染症にかかりやすくなります.正常な赤血球は酸素を運搬する働きをしています.赤血球が減少すると,顔色が悪い・疲れやすいなどの「貧血」の症状が現れます.正常な血小板は出血を止める役目をはたしています.血小板が減少すると,血が止まりにくくなる・青あざ(紫斑や点状出血)ができる・重要な臓器(脳など)に出血をする,などの症状が現れます.そのほか,骨・関節が痛くなることがあります.また

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