診療支援
患者説明

透析開始時の治療選択
酒井 謙
(東邦大学医療センター大森病院腎センター・教授)

1.現在の病状・病態

 腎臓は血液を濾過して尿を作り,これを体の外に排泄しています.腎臓の働きが10%以下にまで低下すると,自分の腎臓では自分の体を浄化しきれなくなり,老廃物が蓄積して倦怠感,食欲低下,悪心,嘔吐,頭痛などの尿毒症状が出現します.すなわち体液のバランスが取れなくなり,息切れや呼吸困難が出現し,放置すると生命に危険が及びます.この場合,廃絶した自身の腎臓機能の代わりに透析療法,あるいは腎臓移植で血液を浄化する必要が出てきます.

2.治療目的

 透析療法の目的は普通に生活ができる状況への改善にあります.透析療法は腎臓病の治癒を目的とする治療でなく,一生持続しなければならない腎機能の代替療法です.

3.治療法の概略と効果

 末期腎不全の腎代替治療法として,①血液透析,②腹膜透析,③腎移植の3つがあります.

1)血液透析を選択した場合

 その準備に手術(内シャント手術あるいは透析カテーテル挿入術)が必要です.血液透析導入時における治療間隔は週2~3回,治療時間は1回3~4時間かかり,通常は医療機関に通って行う治療です.血液を体外に取り出し,透析器に循環させて,体内に戻すことで血液を浄化します.血液を透析器に送り込むために,血液流量の多い太い血管が必要となり,そこで腕の静脈と動脈を局所麻酔の手術でつなぎ合わせて「内シャント」をつくります.この「内シャント」作成が間に合わない,または「内シャント」がなんらかの理由で使用できない場合,頸あるいは脚の付け根に挿入するのが「透析カテーテル」です.期待される効果は自覚症状(嘔気,食欲低下,倦怠感,呼吸困難感)や高血圧,むくみ,そのほか「血液検査」もしくは「電解質異常やアシドーシス」などの尿毒症にかかわる状態の改善が挙げられます.長期的には週3回,1回3~5時間をかけて血液透析は行われ,下記に述べる腹膜透析と違い,医療施設において時間的拘束があ

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