診療支援
患者説明

腎生検
酒井 謙
(東邦大学医療センター大森病院腎センター・教授)

1.現在の病状・病態

 腎生検とは,蛋白尿あるいは血尿という尿異常や,尿所見がない場合においても,原因不明の腎機能低下に関して有用かつ正確な診断を得る方法です.腎疾患を病理学的に診断し,予後や治療効果を推定し,治療方針を決定できます.具体的には,検尿異常,急性腎不全,ネフローゼ症候群,移植腎が適応として挙げられます.

 腎生検の絶対禁忌としては,患者本人や家族の同意が得られない場合,安静が得られず血管や他臓器損傷のおそれのある場合,明らかな尿路系感染症(腎盂腎炎など),および腎癌が疑われる場合です.また,出血傾向,片腎(腎臓が1つしか存在しない場合で,移植腎を除きます),萎縮腎,管理困難な高血圧がある患者ではハイリスク病態であるため慎重な対応のもとで行うことが必要とされています.

2.検査目的

 腎生検により,病名,重症度,治療への手がかり,臨床病期が判明します.

3.検査法の概略と効果

 入院のうえ,行います.入院期間は,3泊4日~5泊6日が多いようです.

 検査前の食事は止め,飲水は構いません.検査は通常処置室で行い,まず前腕に点滴のためのチューブを留置します.腎臓は上腹部の背中側にあるため,検査は腹臥位(腹這い)で行います.このとき腎臓が移動しないよう,お腹に枕を当てがうことがあります.体位が確保できたら,超音波で腎臓を確認し,腎臓は呼吸で上下するので,息を吸ったり,止めたり,吐いたり,協力していただきます.そのあと,背中の皮膚を消毒し,再度腎臓の位置を確認したら,穿刺部位に局所麻酔を行います.局所麻酔を十分に終えたら,超音波ガイド下で再度腎臓を確認しながら特殊な針を進めてゆき,針が腎臓の直上に達したところで,数秒息を止めていただき,その間に腎臓の組織を採取します.この操作を2~3回行います.採取される腎臓の組織は鉛筆の芯程度の太さで,長さは1~2cm程度です.その後は,止血(用手

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