診療支援
患者説明

神経免疫療法
渡邉 充
(九州大学病院脳神経内科・助教)

1.対象となる神経免疫疾患について

 免疫療法が必要な神経疾患には,多発性硬化症,視神経脊髄炎スペクトラム障害(neuromyelitis optica spectrum disorders;NMOSD),重症筋無力症,多発性筋炎・皮膚筋炎,ギラン–バレー(Guillain–Barré)症候群,慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー(chronic inflammatory demyelinating polyradiculoneuropathy;CIDP),自己免疫性脳炎,血管炎・膠原病関連神経障害など,免疫異常が病態に関与していると考えられる疾患が挙げられます.

2.治療目的

 治療目的は急性期治療と維持療法により異なります.急性期治療は,病状が急に悪化した際に症状を改善させるために行うものです.急性期治療を行わないことで,障害が残ったり,回復が遅れたりすることがありますが,治療を行っても後遺症が残る可能性があります.維持療法は,一部の炎症性疾患では免疫異常が持続することから,症状が再び悪化しないよう病気が安定した状態を維持することを目的としています.必要な維持療法を行わず再発を繰り返すと,障害が残存,または悪化する場合があります.

 疾患ごとに有効な急性期治療法・維持療法,その必要性が異なりますので,主な疾患については本項末尾で各疾患の診療ガイドライン1~5)に沿って新しい知見も加えながら説明します.

3.治療法の概略

 神経免疫疾患の治療には,大きく分けて副腎皮質ステロイド薬(以下,ステロイド薬),血漿浄化療法,経静脈的免疫グロブリン(intravenous immunoglobulin;IVIg)療法,免疫抑制薬,分子標的薬などの病態特異的な治療薬があります.以下に各治療法・薬剤の特徴,効果および副作用について説明します.一般的な注意点として,ステロイド薬や免疫抑制薬,一部の分

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