診療支援
患者説明

関節リウマチの生物学的製剤による治療
髙崎芳成
(順天堂大学医学部膠原病内科・名誉教授)

1.生物学的製剤を始める理由

 関節リウマチ(rheumatoid arthritis;RA)は,原因不明の免疫異常によって引き起こされる激しい関節の炎症を特徴とする病気です.関節の炎症を放置すると,骨や軟骨が破壊されて関節が動かしにくくなります.また,関節ばかりではなく肺,腎臓,皮膚などにも病変を伴うことがある全身性の炎症性疾患です.この病気の原因は不明ですが,病気の成り立ちにはリンパ球やマクロファージなどの免疫細胞が産生するTNF–αやIL–6といったサイトカインとよばれる物質が重要であることがわかっています.そして,これらの作用により関節破壊は発症から1~2年の間に急速に進行します.その結果,関節が動かせなくなり,日常の動作の著しい制限を受け,日々の生活を正常に営むことが困難になる可能性があります.

 そこで早期に適切な治療を開始して関節の炎症を抑え,リウマチの進行を食い止める必要があります.この治療を適切に行うために日本リウマチ学会から診療のガイドラインが提唱されています1).このガイドラインによれば,患者さんがRAと診断されたらまず抗リウマチ薬のなかでもメトトレキサート(methotrexate;MTX)による治療を開始することが強く推奨されています.しかし,このMTXやほかの抗リウマチ薬を併用しても6か月以内に寛解とよばれるほとんど症状のない状態か,低い疾患活動性を導けなければ,次の段階として生物学的製剤による治療が推奨されています.現在のあなたのRAの状態は,まだ炎症が続いており,残念ながら十分な改善が認められていません.そこで,関節の痛みや腫れとともに骨や軟骨の破壊を抑えるため,生物学的製剤を開始することを提案します.

2.生物学的製剤とはどのような薬剤か

 生物学的製剤とは通常の薬剤が化学合成によって作られるのに対し,培養細胞などを利用して生物学的手法によって作製

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