診療支援
患者説明

クロザピン療法
木田直也
(国立病院機構琉球病院・医長)
橋本亮太
(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所精神疾患病態研究部・部長)

1.現在の病状・病態の説明1~4)

 統合失調症はおよそ100人に1人が発症をする頻度の高い精神疾患です.このなかで少なくとも2種類以上の抗精神病薬による十分量・十分期間の治療を行っても精神症状の改善がみられないものを治療抵抗性統合失調症といいます.これは決してまれな病態ではなく,統合失調症の患者さんの3割程度が該当すると考えられています.対象となる患者さんの具体的な状況としては,ほかの抗精神病薬で治療をしていても,幻覚・妄想などの陽性症状や無気力や無関心などの陰性症状が改善しない場合,多飲水,自傷行為,暴力行為などが問題となっている場合,「足がムズムズする」「じっと座っていられない」などの錐体外路症状などの副作用のために必要量の抗精神病薬の服用ができない場合,再発や再入院を繰り返している場合などが該当します.

2.治療目的1~5)

 この治療抵抗性統合失調症に対する治療薬がクロザピン(CLZ)です.国内での臨床試験(後期第Ⅱ相試験・第Ⅲ相試験)では,約57~67%の患者さんに精神症状の改善が認められています.CLZは海外では100か国以上で使用が承認され,多くの患者さんが使用してきた実績があります.CLZは,世界中の統合失調症のガイドラインで治療抵抗性統合失調症に推奨されている薬剤であり,本邦の「統合失調症薬物治療ガイドライン」でも強く推奨されています.国内でも2009年7月~2020年8月までに延べ10,000人以上の患者さんに使用されています.CLZによる薬物治療を行うことで,重度の精神症状の改善が期待できます.

3.治療法の概略1~5)

 CLZ導入に際しては原則として服薬開始後18週間までは,クロザリル患者モニタリングサービス(Clozaril Patient Monitoring Service;CPMS)に登録されている医療機関への入院が必要です.CLZ治療中は無顆粒

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