診療支援
患者説明

依存症(アルコール依存症を中心に)
松﨑尊信
(久里浜医療センター精神科・医長)

1.現在の病状・病態

 精神作用物質とは,摂取すると酩酊などの快反応が得られるために連用,乱用されやすく,最終的にその使用がほかのいかなる行動よりも,より高い優先度をもつようになる状態,すなわち依存状態を呈するようになる薬物をいいます.世界保健機関(WHO)が作成した,「疾病及び関連保健問題の国際統計分類」では,こうした精神作用物質使用による精神および行動の障害を,①アルコール,②アヘン類,③大麻類,④鎮静剤あるいは睡眠剤,⑤コカイン,⑥カフェイン,および他の精神刺激剤,⑦幻覚剤,⑧たばこ,⑨揮発性溶剤,⑩多剤および他の精神作用物質の10種類に分類しています1).身体依存とは,精神作用物質が長時間体内にあり効果を発現し続ける結果,生体がその効果が存在する状態に適応して正常に近い機能を営むようになり,その効果が減弱したり,消失したりすると,身体機能のバランスが失われて適応失調の状態となり,病的症候である離脱を呈するような身体的状態をいいます.また,精神依存とは,薬物摂取に対する強い欲求(渇望)を呈する症候です2)

 依存症は「否認の病」ともいわれます.否認とは,自己に生じるさまざまな問題を過小評価し,「自分は依存症なんかではない」と否定し,治療を拒むことです.

 また,依存症には,精神作用物質による「物質依存」と,ギャンブルなどの行動がコントロールできない「行動依存」がありますが,本項では物質依存に焦点を当ててアルコール依存症を中心に説明します.

2.治療目的

 治療の目的は,精神作用物質の不適切な使用による健康問題の発生,進行および再発の防止を図ることです.そして,家族など周囲の人への深刻な影響や社会問題を解決し,安心して暮らすことのできる生活を回復することを目指します.

 そのための物質依存症の治療目標は,依存物質の摂取を完全にやめ続けることであり,最も安定的かつ安全な目標です.特

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?