診療支援
患者説明

摂食障害(精神科を窓口に受診する場合)
佐々木剛
(千葉大学医学部附属病院こどものこころ診療部・副部長)
中土井芳弘
(四国こどもとおとなの医療センター児童発達支援センター長)

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1.現在の病状・病態の説明

 摂食障害には,主に神経性やせ症(anorexia nervosa;AN)と神経性過食症(bulimia nervosa;BN)があり,ここではANについて取り上げます.

 典型的な症例では,ANでは著しいやせにもかかわらず必要なカロリー摂取を制限し続け,体重増加や肥満への強い恐怖を示し,過剰な運動や自己誘発嘔吐などの体重増加を阻害する行動が持続し,体重や体型に関する自己認識の障害がみられます.年齢,性別,成長曲線,身体的健康状態に対して正常下限を下回る体重を維持することが多いため,児童・青年では,期待される体重増加や正常な成長曲線が維持できない場合もあります.発症早期に援助を開始し,極度の低栄養や慢性化を防ぐことが望まれますが,十分な病識(自分の心身に,それまでとは異なった病理的な変化が起きているという認識)をもって受診することはまれであるため,治療関係の形成は難しく治療は中断しがちです.低体重でほとんど食べていないのに,「どこも悪くない」,「ちゃんと食べている」と話すなど,否認が重要な特徴です.病態として,生物学的な側面(遺伝的側面,セロトニン仮説–強迫スペクトラム障害仮説,そのほかの神経伝達物質の関与,認知機能の障害など),心理社会学的な側面,併存症からの病因理解(気分障害,不安障害,物質使用障害,パーソナリティ障害など)などが示唆されていますが,いずれもANの病態全体を説明できるまでに至っておりません.

2.治療目的

 心身両面が回復し健康的な社会生活が送れるようになることが最終目標ですが,患者さん本人がどのような体験をしているか,回復のために何か本人が取り組めることはないかという視点をもち,患者さん本人の取り組みを治療者が援助するという関係がもてるよう

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