診療支援
患者説明

排卵誘発
木村文則
(滋賀医科大学産科学婦人科学講座・准教授)

1.現在の病状・病態

 排卵が毎月きっちり起こっていないため妊娠しにくい状態であると考えられます.排卵障害は,月経中の血液検査,超音波による卵巣の形などによりその原因を分類することができます.脳または卵巣のどちらか,あるいは,その両方に異常を認めると考えられ,①視床下部・下垂体機能不全,②視床下部・下垂体機能低下(多囊胞性卵巣症候群:polycystic ovarian syndrome;PCOSを含む),③卵巣機能不全,④高プロラクチン(乳汁分泌ホルモン)血症に分けられます1).一般に排卵誘発を行うのは,①視床下部・下垂体機能不全,②視床下部・下垂体機能低下の場合です.それぞれの場合について説明します.

1)視床下部・下垂体機能不全

 脳にある視床下部と下垂体という部位から出される卵巣への命令系が高度に障害されています.肉体的または精神的な高度のストレス,先天性遺伝子異常,後天的な視床下部・下垂体障害などによる排卵にかかわるホルモン分泌の高度障害が原因と考えられます.具体的にはストレス性無月経,体重減少性無月経(神経性無食欲症を含む),ゴナドトロピン(下垂体から分泌される卵巣を刺激するホルモン)単独欠損症,カルマン(Kallmann)症候群,シーハン(Sheehan)症候群などが原因と考えられます.血液検査ではゴナドトロピンやエストラジオール(卵巣から分泌される女性ホルモン)の低下,超音波検査では小さな胞状卵胞を認めることはあっても発育した卵胞を認めないことを特徴としています.

2)視床下部・下垂体機能低下

 脳中枢からの卵巣への刺激系が障害されていますが,一般にその障害の程度は軽度な場合と考えられます.視床下部から下垂体あるいは下垂体から卵巣に伝達されるホルモンの分泌が障害されています.分泌される量やパターンが障害されますが,ある程度は保たれている状態です.精神的,肉体的なストレ

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