診療支援
患者説明

前立腺がんに対する強度変調放射線療法
土器屋卓志
(元埼玉医科大学国際医療センター放射線腫瘍科・教授)

1.治療の概要

 放射線治療にはいろいろな方法がありますが,そのなかでも最新の高精度放射線治療装置によって実施される強度変調放射線療法(intensity modulated radiation therapy;IMRT)により,少ない副作用で良好な治療成績が得られます.この治療は治療台に5~20分間静かに寝ていていただくだけであり,痛いとか苦しいといった苦痛は全くありません.

 本治療の特徴は前立腺がんを完全に治すのに十分な放射線量を集中的に前立腺に照射する一方,周りの膀胱や直腸といった正常な臓器への余分な被曝線量を最低限に抑えることができることです.

 治療成績は手術と同等またはそれ以上という報告が多くあります.

 治療はすべて数週間の外来通院で可能であり,格段の理由がない限り入院の必要はありません.自宅あるいは職場から通院される方も多くいます.

2.治療の副作用,合併症,後遺症とその対処法

 治療中の副作用(早期有害事象)として軽度の排尿痛,頻尿がありますがいずれも治療終了後は回復してきます.今までの放射線治療で最も心配された直腸出血の心配はほとんどなくなりました.

 治療後に起こる副作用(晩期有害事象)として膀胱出血や排尿障害あるいは直腸出血などが挙げられますが,多くは併存症(糖尿病,血液疾患,感染症など)と関係しますので,これらの方々は慎重に経過をみる必要があります.

3.本治療以外の治療について(代替療法)

 同等の成績が期待できる放射線治療としてはシード治療(小さな放射性粒子を前立腺に永久挿入する治療で2~3日の入院ですべて終了する)や陽子線治療および重粒子線治療があります.

 また高精度放射線治療装置がない場合は前立腺と直腸の間にスペーサーを注入して,通常照射を行う方法もあります.

4.治療にかかる費用

 すべて保険診療で行われます.

5.説明の特徴・特色

 「症状・病態」,「実施目的

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?