診療支援
患者説明

食物アレルギー
中村陽一
(横浜市立みなと赤十字病院アレルギーセンター・センター長)

1.現在の病状・病態

 食物アレルギーとは,「食物によって引き起こされる抗原特異的な免疫学的機序を介して生体にとって不利益な症状が惹起される現象」と定義されます1)

 食物アレルゲンが生体に侵入する経路には経口,経皮,経気道,経粘膜,経胎盤,あるいは注射などがあります.例えば,小麦粉を吸入して感作が成立し,再度吸入することで喘息を発症するパン職人喘息(baker’s asthma)も食物アレルギーです.感作に関与する要因も食物であるとは限りません.例えば,花粉,ラテックス,マダニやクラゲ咬傷によって感作され,それに交差抗原性を示す食物(果物,獣肉,納豆など)によって症状が誘発されるものも食物アレルギーに含めます.食物成分を含有する生活用品(石鹸,化粧品,アロマオイルなど)によって感作が成立し,そのアレルゲンを含む食品によって誘発されるものも含みます.

 一方,食品の摂取によりアレルギー症状が誘発されても,原因が本来の食物アレルゲンではなく,その食品に混入したダニや寄生虫の成分であった場合(経口ダニアナフィラキシー,アニサキスアレルギーなど)は,食物アレルギーには分類されません.

 なお,食物によって生じても免疫学的機序によらない有害事象はアレルギーには含まれず,食物不耐症と称されます(図1).鮮度の低下した魚介類によるヒスタミン食中毒,消化酵素の欠乏・活性低下による乳糖不耐症や,食品中に含まれる生理活性物質(ホウレンソウ,トマト,トウモロコシに含まれるヒスタミンやトマト,バナナ,キウイフルーツ,パイナップルに含まれるセロトニンなど)によりアレルギー類似の過敏反応が生じる場合などがこれにあたります.さらに,誰にでも一様に起こりえるウイルス性・細菌性胃腸炎などの感染症やフグ毒・キノコ毒による食中毒は,食物不耐症にも含まれません.

 食物アレルギーの臨床病型(表1)のうち,代表的なも

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